漫画プロットの書き方|ネーム前の5手順と32ページの見本

漫画のプロットとは、ネーム(コマ割り・構図・セリフをラフに描いた構成案)に入る前に、話の流れとページの使い方を文字で決めた設計図です。漫画のプロットは、次の5ステップで書けます。

  1. 話を一文にまとめる(誰が・何をしようとして・何に阻まれるか)
  2. 起承転結に分け、ページ数を割り振る
  3. シーンを並べ、シーンごとのページ数を決める
  4. 見開き・「めくり」・山場のページを決める
  5. シーンごとに、出来事・キャラの気持ち・決めゼリフ・伏線を書く

小説のプロットとの違いは、ページ数が決まっていることと、ページをめくる位置まで設計することです。後半に、読み切り32ページのプロット見本と、コピーして使えるテンプレートを載せています。

漫画のプロットとネームの違い

プロットネーム下描き・原稿
形文字(箇条書き・表)ラフな絵+セリフ清書する絵
決めること話の流れ、シーンの順番、ページ配分、山場の位置コマ割り、構図、セリフの位置、ページごとの見せ方絵の仕上がり
直しやすさ何度でもすぐ直せる直すとページ単位で描き直し直すと作画からやり直し

話の筋に問題があると、ネームや下描きの段階で直すほど手間が増えます。プロットの段階で「この話は何ページで、どこが山場か」まで決めておくと、ネームを描き直す回数が減ります。ネームの描き方はネームの描き方で紹介しています。

小説のプロットとの違い

小説のプロット漫画のプロット
長さの単位字数・章ページ数・話数
長さの自由度書きながら伸び縮みできる読み切りや連載の1話はページ数が決まっている
気持ちの伝え方地の文で心の中を書ける表情・しぐさ・セリフ・間(コマの大きさ)で見せる
ページをめくる位置気にしなくてよい「めくり」の位置が読者の驚きを左右する

小説のプロットの書き方は小説プロットの書き方にまとめています。

漫画のプロットに書く項目

項目何を書くか
一行あらすじ誰が・何をしようとして・何に阻まれるか
主人公の変化最初の状態と最後の状態
総ページ数応募先・掲載先で決まったページ数
シーン場所と出来事(一〜二文)
ページ数シーンごとに使うページ数
気持ちの流れシーンの始まりと終わりで、キャラの気持ちがどう動くか
決めゼリフ・見せたい絵そのシーンで必ず入れたいセリフや絵
伏線張る・回収するもの
見開き・めくり見開きにするページ、めくった直後に見せるもの

漫画プロットの書き方5ステップ

例として、高校の書道部を舞台にした読み切り32ページのプロットを作っていきます。作品・人物はすべて創作です。

ステップ1:話を一文にまとめる

まず、話を一文で言えるようにします。入れるのは「誰が」「何をしようとして」「何に阻まれるか」の3つです。

人前に出ると筆が止まる書道部の部長が、字の下手な新入部員と組んで、文化祭の書道パフォーマンスに挑む。

あわせて、主人公の最初と最後を決めます。

  • 最初:人前で筆が止まる自分を隠し、「失敗しない字」しか書かない
  • 最後:書き損じも作品に生かして、人前で大きな字を書ききる

読み切りでは、この「最初→最後」の変化が一本通っていれば、話がぶれません。

ステップ2:起承転結に分け、ページ数を割り振る

次に、話を起承転結に分けて、総ページ数を割り振ります。読み切りでは、承を長めに、結を短めにすると収まりやすくなります。

役割32ページの例
起主人公と状況、話が動き出すきっかけ8ページ(1〜8)
承目的に向かう中での衝突と、主人公の弱さ11ページ(9〜19)
転本番・事件・大きな転換10ページ(20〜29)
結変わった主人公と余韻3ページ(30〜32)

割合はあくまで目安です。アクションの見せ場が長い話なら転を、関係の変化をじっくり描く話なら承を厚くします。起承転結の考え方は三幕構成の解説にも比較があります。

ステップ3:シーンを並べ、ページ数を決める

起承転結の中に、シーンを並べます。シーンごとに「場所」「出来事」「ページ数」を書きます。

起(1〜8P)
  シーン1 部室(4P・1Pは扉) 部長のあかりが、手本のように整った楷書を書く
  シーン2 見学(4P) 1年の春日が入部。字は下手だが「書くのが好き」と言う

ページ数の合計が総ページ数に収まるかは、この段階で確かめます。1シーンに使えるページが少なすぎるときは、シーンを減らすか、2つのシーンを1つにまとめます。

ステップ4:見開き・めくり・山場のページを決める

漫画のプロットで、小説にはない作業がここです。

  • 山場のページ:話のいちばん大きな見せ場を、どのページに置くか
  • 見開き:2ページを1枚の絵として使うページ。読み切りなら、山場の1か所に絞ると効果が大きくなります
  • めくり:ページをめくった直後に見せるもの。読者の驚きや期待は、めくりで大きくなります

日本の漫画は右綴じで、原則として1ページ目は左ページ(奇数ページ)から始まります。そのため、見開きは**偶数ページ(右)と奇数ページ(左)**の組み合わせになります。たとえば26〜27ページを見開きにするなら、その直前の25ページ(左ページ)の最後のコマに「めくりたくなる引き」を置き、めくった瞬間に見開きが目に入るようにします。掲載先や応募先によって、始まりのページの左右や扉ページの扱いが変わることもあるので、要項や担当編集の指定に合わせてください。

プロットの段階のページ数や見開きの位置は、仮の目安でかまいません。ネームを描きながら1〜2ページのずれを調整して、めくりの位置を合わせていきます。

ステップ5:シーンごとに中身を書き込む

最後に、シーンごとに次の4つを書きます。

  • 出来事:そのシーンで何が起きるか
  • 気持ちの流れ:キャラの気持ちがどう動くか(例:自信 → 動揺)
  • 決めゼリフ・見せたい絵:必ず入れたいセリフや絵
  • 伏線:張るもの・回収するもの

セリフは全部書かなくてかまいません。ネームで決めるので、プロットには「このシーンで言わせたい一言」だけを書いておきます。セリフの書き方は漫画のセリフの書き方にまとめています。

漫画プロットの見本:読み切り32ページ

5ステップで作ったプロットの見本です。

作品名:『白紙の十秒』
ジャンル:青春/部活もの 読み切り32ページ

■ 一行あらすじ
人前に出ると筆が止まる書道部の部長が、字の下手な新入部員と組んで、
文化祭の書道パフォーマンスに挑む。

■ 主人公
墨田あかり(高2)。書道部の部長。整った楷書が書けるが、
中学の大会で、観客の前で筆が止まってから人前で書けない。
■ 相方
春日陽太(高1)。元ダンス部。字は下手だが、体を大きく使って書く。

■ 最初 → 最後
失敗しない字しか書かない → 書き損じも生かして、人前で大きな字を書ききる

──────────────────────

【起】1〜8P
シーン1 部室(1〜4P)
・1Pは扉(タイトルを入れた1枚絵)。放課後の部室で、あかりが一人で筆を持つ。
・2〜4P:手本のような楷書。顧問から「文化祭のステージで書道パフォーマンスをやらないか」と言われ、あかりは断る。
・伏線を張る:人前の話になると、右手首を左手で握りしめる癖。
・気持ち:落ち着き → 動揺

シーン2 見学(5〜8P)
・春日が見学に来て、半紙からはみ出す大きな字を書く。
・「下手だけど、書くのは好きなんで」。あかりは思わず笑ってしまう。
・8Pの最後のコマ:春日「パフォーマンス、二人でやりましょうよ」→ 二人しかいない部で、出ることが決まる。
・気持ち:苛立ち → 少しの期待

【承】9〜19P
シーン3 練習(9〜13P)
・大きな紙に二人で書く練習。あかりは「正確に」、春日は「勢いで」とぶつかる。
・春日の字を、あかりが「それじゃ字じゃない」と言ってしまう。
・気持ち:苛立ち → 後悔

シーン4 過去(14〜16P)
・春日が古い大会の写真を見つける。中学のあかりが、筆を持ったまま固まっている。
・あかり「書き損じたら、終わりなんだよ。紙は一枚しかないから」
・気持ち:隠していたものを見られた痛み

シーン5 前夜(17〜19P)
・春日が、ダンス部をやめた理由を話す。「失敗した振り付けも、続けて踊れば振り付けに見えるんです」
・19Pの最後のコマ:帰り道、街灯の下で、あかりが握りしめた自分の右手首を見つめる。
・気持ち:後悔 → 迷い

【転】20〜29P
シーン6 本番(20〜25P)
・本番の体育館。音楽が始まる。観客の視線に中学の大会がよぎり、あかりは右手首を握りしめたまま動けない。(白紙のまま十秒)
・春日がわざと大きく墨を落とし、紙の真ん中に黒いしみを作る。会場がざわつく。
・春日「上から書いてください。俺も書きます」
・25Pの最後のコマ(めくりの引き):あかりが右手首から左手を離し、両手で筆を握り直す。
・気持ち:恐怖 → 覚悟

シーン7 見開き(26〜27P)
・春日がしみから全身で大きな払いを引き、続けてあかりが残りの画を一気に書ききる。紙いっぱいに「翔」の一字。
・決めの絵:見開きで、二人で書いた大きな字と、筆を振り抜いたあかりと春日。

シーン8 書ききったあと(28〜29P)
・拍手。あかりは開いた自分の手のひらを見る。震えていない。
・伏線を回収する:右手首を握りしめる癖が出ない。
・気持ち:放心 → 喜び

【結】30〜32P
シーン9 部室(30〜32P)
・部室の壁に「翔」が貼られている。あかりが、春日の引いた払いを指でなぞる。
・あかりが初めて春日の字をほめる。「その線、嫌いじゃない」
・最後のコマ:部員募集の貼り紙。あかりの楷書と、春日の大きな字が並んでいる。
・気持ち:照れ → 晴れやかさ

この見本で見てほしいポイントは3つです。

  • 山場(転)を見開きの位置から逆算している:26〜27Pの見開きのために、25Pの最後のコマに「両手で筆を握り直す」引きを置いています
  • 伏線が最初のシーン(1〜4P)で張られ、28〜29Pで回収される:右手首を握りしめる癖が、主人公の変化を絵で見せる役割をしています
  • 各シーンに「気持ちの流れ」がある:ネームを描くとき、どのコマで表情を変えるかの目安になります

ページ数別の配分の目安

読み切りのページ数ごとの、起承転結の配分の目安です。

総ページ数起承転結見開き
16ページ4552なし〜1か所
24ページ68731か所
32ページ8111031か所
45ページ10171441〜2か所

配分は、話の種類で変わります。ページ数の多い読み切りでも、最初の数ページで「何の話か」と「主人公が抱える問題」を見せておくと、読者が話に入りやすくなります。表はプロットを書き始めるときの出発点として使い、シーンを並べてから調整してください。

連載漫画のプロットの組み方

連載では、全体の骨組みと1話ごとのプロットを分けて作ります。

全体の骨組みは「編」で区切る

物語をいくつかの「編」(ひと続きのエピソード)に分け、編ごとに始まり・山場・終わりを決めます。全部の話を最初から決めておく必要はなく、次の編までが見えていれば描き始められます。

1話ごとのプロットに書く3つのこと

1話ごとのプロットには、少なくとも次の3つを書きます。

  1. この話の中心の出来事(一文)
  2. 1ページ目に見せるもの(前の話を読んでいない人にも状況がわかる絵)
  3. 最後のページの引き(次の話を読みたくなる終わり方)

話をまたぐ伏線と、読者の記憶

連載では、前の話を読んでから時間があいて次の話を読む読者がいます。何話も前に張った伏線を回収するときは、回収する話の中に、張った場面を思い出せるコマを入れておくと伝わりやすくなります。どの話で何を張り、どの話で回収するかは、プロットに一覧で書いておきましょう。伏線の管理は伏線の管理で詳しく紹介しています。

プロットからネームへ

プロットができたら、シーンごとにページを割り、ネームに描き起こします。

プロット:シーン6 本番(20〜25P) 白紙のまま十秒、春日が墨を落とす
   │
   ▼
ネーム:
  20P 体育館の全景。音楽が始まり、二人が大きな紙の前に立つ(大ゴマ)
  21P 観客の視線/中学の大会の記憶がよぎる
  22P 右手首を握りしめたまま固まるあかり(顔のアップ)/白い紙(間のコマ)
  23P 見かねた春日が筆に墨をたっぷり含ませ、紙の真ん中にわざと落とす(動きのコマを3つ)
  24P 広がる黒いしみ/ざわつく観客/驚くあかりに、春日「上から書いてください。俺も書きます」
  25P しみが字の一部に見える/あかりが左手を離し、両手で筆を握り直す(最後のコマ・めくりの引き)

プロットのシーンとネームのページがつながっていれば、ネームで迷ったときにプロットに戻って「このシーンは何のためにあるか」を確かめられます。コマの割り方はコマ割りの基本、プロットからさらに進めて、セリフやト書きまで文字で書き起こす方法(原作と作画を分担するときなど)は漫画の脚本の書き方にあります。

漫画プロットのテンプレート

次の項目をメモアプリやテキストファイルにコピーして使えます。

■ 作品名:
■ ジャンル/総ページ数:
■ 一行あらすじ(誰が・何をしようとして・何に阻まれるか):
■ 主人公の最初 → 最後:
■ 山場のページ/見開きのページ:

【起】 P〜 P
シーン(P〜P)場所:
・出来事:
・気持ちの流れ: →
・決めゼリフ・見せたい絵:
・伏線(張る/回収):

【承】 P〜 P
(シーンをくり返す)

【転】 P〜 P
・めくりの引き(見開きの直前のページ):

【結】 P〜 P
・最後のコマ:

LitMemoで漫画のプロットを作る

創作管理ツール LitMemo の「ストーリープロット」では、シーンをプロットの項目として「起」「承」や「第一編」などのグループに分けて並べ、各項目に登場するキャラクター・設定・伏線をひも付けられます。項目が固まったら、「話として展開」でその項目から新しい話を作り、ネームを描き始められます。作っておいたキャラクターは、ネームにセリフを入れるときに話し手として選べます。

ネームに入る段階でも、書いたプロットを活かせます。そのページで起きることを書いてAI漫画生成を使うと、AIがコマ割り・構図・セリフの下書きを提案するので、コマごとに直していけます。プロットのあとの工程はAIで漫画を作る5工程にまとめています。

さらに読む

よくある質問

漫画のプロットとは何ですか?
ネーム(コマ割り・構図・セリフをラフに描いた構成案)に入る前に、話の流れ・シーンの順番・ページ配分・山場の位置を文字で決めた設計図です。絵を描く前に話の筋を固めておくことで、ネームを描き直す回数を減らせます。
プロットとネームの違いは何ですか?
プロットは文字で書く話の設計図で、シーンの順番やページ配分を決めます。ネームはラフな絵とセリフで、コマ割り・構図・セリフの位置まで決めたものです。順番はプロットが先で、プロットのシーンをページに割ってネームに描き起こします。
漫画のプロットはどこまで細かく書けばいいですか?
自分用なら、シーンごとの出来事とページ数、山場の位置が決まっていれば十分です。担当編集に見せる場合や共同制作では、シーンごとの気持ちの流れや決めゼリフまで書いておくと話が伝わりやすくなります。セリフをすべて書く必要はなく、細かいところはネームで決めます。
読み切りのページ配分はどう決めればいいですか?
起承転結に分けて、承を長めに、結を短めに割り振ると収まりやすくなります。32ページなら起8・承11・転10・結3ページがひとつの目安になります。話の種類によって転や承を厚くするなど、シーンを並べてから調整してください。
「めくり」とは何ですか?
ページをめくる動きを使って、めくった直後のページで読者に驚きや見せ場を見せる演出のことです。めくる前のページの最後のコマに置く「引き」も含めて、めくりと呼ぶことがあります。日本の漫画は右綴じなので、左ページ(通常は奇数ページ)の最後のコマで引きを作り、めくった先の右ページや見開きに見せ場を置くと効果が大きくなります。
連載漫画のプロットはどう作ればいいですか?
全体を「編」で区切った骨組みと、1話ごとのプロットに分けて作ります。1話ごとのプロットには、中心の出来事、1ページ目に見せるもの、最後のページの引きの3つを書きます。全話を最初から決めなくても、次の編までが見えていれば描き始められます。