ネームの描き方|漫画のネームとは?6つの手順と見本・コツ
ネームとは、漫画の原稿を描く前に、コマ割り・構図・セリフ・キャラクターの動きを簡単な絵で最後まで描いた設計図です。アニメでいう絵コンテにあたります。ネームの描き方は、次の6ステップです。
- プロットで話の流れとページ数を決める
- 場面ごとにページを割り振る
- ミニネームで見開きごとの流れをつかむ
- ネーム用紙にコマ割り・キャラ・セリフを描く
- 通して読み、削って直す
- チェックリストで仕上げ、下描きへ
自分用のネームなら、絵は棒人間や丸でもかまいません。以下、各ステップのやり方と、1見開き分の見本、ネームが進まないときのコツを解説します。
ネームとは:プロット・下描きとの違い
漫画は、おおまかに次の順番で描き上げます。小学館 新人コミック大賞の「まんが家養成講座」では、ネーム(絵コンテ)を「これから描くまんがの設計図」とし、ノートなどにおおざっぱにコマを割り、人物やセリフを入れて、コマの大きさ・シーンの順番・セリフを検討する工程と説明しています。
| 工程 | 何を決めるか | 形 |
|---|---|---|
| プロット | 話の筋、起承転結、キャラの目的 | 文章 |
| 字コンテ(脚本) | コマごとの画面・セリフ・アングル | 文字の表や台本 |
| ネーム | コマ割り・構図・セリフの位置・キャラの動きと表情 | ラフな絵 |
| 下描き | 原稿に描く絵 | 原稿用紙に鉛筆(デジタルなら下描きレイヤー) |
| ペン入れ・仕上げ | 線、ベタ、トーン | 完成原稿 |
ネームの段階で直すのは、描き直す量がいちばん少なくてすむタイミングです。担当編集との打ち合わせも、多くはネームを見ながら進みます。
字コンテは作家によって書く人と書かない人がいます。文字で先に整理したい人、原作と作画を分担する人は、漫画ネームテンプレートの字コンテ表を使うと、ネームに移る前に構成を固められます。
ネームに使う用紙と道具
ネームは描き直すことが前提なので、気軽に描ける紙を使います。
- コピー用紙を二つ折り:開くと見開きになり、本と同じ状態で確認できます。ページ数分を重ねて折り、冊子のようにすると、めくりの流れも確かめられます
- ネーム用ノート・ネーム用紙:原稿用紙と同じ比率の枠が印刷された市販品
- 自作のネーム用紙:原稿用紙の枠を縮小して印刷したもの。漫画ネームテンプレートからA4のネーム用紙をダウンロードできます
- デジタル:CLIP STUDIO PAINTなどで原稿と同じ設定のファイルを作り、ネーム用のレイヤーに描きます
ネームは見開きで作るのが基本です。読者は右ページと左ページを同時に見るので、1ページずつでは見せ場のバランスやヒキの位置を判断できません。
ネームの描き方6ステップ
ステップ1:プロットで話の流れとページ数を決める
ネームはプロットから始めます。誰が、何をしたくて、何が起きて、どう終わるかを文章で決めておきます。プロットの作り方は漫画のプロットの書き方で解説しています。
あわせて総ページ数を決めます。新人賞に投稿するなら、募集要項のページ数が基準です。たとえば小学館 新人コミック大賞は、ストーリーまんが32ページ前後、ギャグまんが16ページ前後を原則としています。
ステップ2:場面ごとにページを割り振る
話をいくつかの場面に分け、各場面に何ページ使うかを決めます。つなぎの場面は短く、山場には余裕を持たせます。見開きで見せたい場面や、ページをめくった直後に見せたい場面も、この段階で目星をつけておきます。起承転結ごとの配分の目安と、読み切り32ページの見本は漫画プロットの書き方で紹介しています。
『ハイキュー!!』の古舘春一先生も、少年ジャンプ漫画賞ポータルのインタビューで、ネームに起こす前に文章で「ここからここまで何ページ」と区切っていると語っています。
ステップ3:ミニネームで見開きごとの流れをつかむ
最初から通常のネームを描く作家もいますが、全体を先に見渡したいとき、途中で手が止まりやすいときは、1枚の紙に見開きを小さくいくつも並べた**ミニネーム(ちびネーム)**から始める方法があります。小さいので細かい絵は描き込めず、そのぶんコマ割りと流れだけに集中でき、直すのも簡単です。
ここで決めたいのは、各見開きの見せゴマと、ヒキ・メクリの位置です。
- ヒキ:見開きの最後、左ページの最後のコマに「次はどうなる?」を置く
- メクリ:ページをめくった直後の右ページで、答えや驚きを見せる(めくって最初に目に入るコマや大ゴマ)
右綴じの漫画では、1ページ目が単独の左ページになり、以降は偶数ページが右、奇数ページが左に来ます。見開きで見せたい場面は、偶数ページから始まるように調整します。
ステップ4:ネーム用紙にコマ割り・キャラ・セリフを描く
ネーム用紙に、見開きごとに描いていきます。ミニネームを描いた場合は、それを清書するつもりで描きます。描く順番は次のとおりです。
- コマ割り:見せゴマの位置と大きさを先に決め、前後のコマを右上から左下へ並べる
- キャラクター:誰がどこにいて、どちらを向き、どんな表情かが分かる程度に描く
- セリフとフキダシ:セリフを書き込み、読む順番どおりに並んでいるか確かめる
- 効果音・メモ:効果音、背景の指定、カメラの位置などを書き添える
画材・デジタル機器を扱う株式会社Tooの解説サイト「漫画の描き方」では、ネームのポイントが「キャラクターが誰だかわかる」「表情、セリフがわかる」「コマ割りがわかる」「状況がわかる」の4つにまとめられています。
どこまで描き込むかは、誰が読むかで変わります。自分が下描きに進むためのネームなら、自分が分かる程度で足ります。担当編集との打ち合わせや持ち込み、作画担当に渡すネームは、キャラの表情や画面の迫力が他人に伝わるところまで描きます。
セリフは、原稿と同じく縦書きで書き込みます。横書きのメモで済ませると、原稿で縦書きにしたときにフキダシが想定より大きくなり、絵とぶつかることがあります。
コマ割りのルール(コマ間、見せゴマ、タチキリ、1ページのコマ数)は漫画のコマ割りのコツにまとめています。
ステップ5:通して読み、削って直す
最後まで描けたら、時間をおいて読者のつもりで通して読みます。ページ数がオーバーしたときは、場面やセリフを削ります。
別冊マーガレットの「実践ネーム塾」で、河原和音先生は直すときに残す順番として、相手が絡むエピソード、状況を変える動きのあるエピソード、強いセリフを挙げ、似たエピソードは1つにまとめると話しています。
ステップ6:チェックリストで仕上げ、下描きへ
下のセルフチェックリストで確認してから、下描きに進みます。
ネームの見本:1見開きの流れ
「主人公が、信じていた仲間の裏切りに気づく」場面を、見開き2ページ+めくりで組んだ例です。ネームに描く内容を、コマごとに文字で書き起こしています。
【4ページ目・右ページ】
コマ1(引き) 夕方の倉庫街。主人公が約束の場所へ歩いていく
セリフ:主人公「ここで待ってろって言ってたな」
コマ2(寄り) 主人公、倉庫の扉に手をかける。表情はまだ穏やか
コマ3(手のアップ) 扉の向こうから聞き慣れた声
セリフ:(扉の向こう)「……あいつはまだ何も知らない」
【5ページ目・左ページ】
コマ1(寄り) 主人公の笑顔がこわばる
コマ2(手のアップ) 扉を押す手が止まる
コマ3(目のアップ・左下) 見開かれた目。ここがヒキ
セリフなし
【めくり → 6ページ目・右ページ】
コマ1(大ゴマ・タチキリ) 扉が開き、倉庫の中が見える。仲間が敵の側に立っている
セリフ:仲間「……来ちまったか」
5ページ目は、コマが進むたびに主人公へ寄っていき、倉庫の中は一度も描きません。答えはページをめくった6ページ目の最初の大ゴマで初めて見せます。ヒキのコマ(目のアップ)を小さくし、メクリのコマを大きくすることで、緩急がついて驚きがいっそう強まります。
ネームで決めること:距離と角度
ネームでは、各コマをどの距離・どの角度から見せるかも決めます。
| 距離 | 見せる範囲 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 引き(ロング) | 場所全体、人物は小さく | 場面の始まり、位置関係の説明 |
| 腰から上(ウエストショット) | 人物の上半身と周り | 会話、日常の動作 |
| 寄り(バストアップ・顔のアップ) | 胸から上、顔 | 大事なセリフ、リアクション |
| ドアップ | 目、手、小物だけ | 感情が爆発する瞬間、意味のある小物 |
| 角度 | 見え方 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 目線の高さ | 読者が同じ場にいる感覚 | 日常、会話 |
| 俯瞰 | 上から見下ろす。人物が小さく見える | 孤立、状況説明 |
| あおり | 下から見上げる。人物が大きく見える | 威圧感、力強さ、決意 |
同じ距離のコマが続くと単調になります。会話が続くページでも、引きや手元のアップを1コマはさむと流れが変わります。
コマ数と読むスピード
1ページに入れるコマ数で、読者がそのページにかける時間が変わります。
- コマが多いページ:1コマずつ読むので、読み終えるのに時間がかかります。一瞬の出来事を細かく分けて見せたいとき、会話の多い場面に向いています
- 大きいコマが少ないページ:絵がシンプルならひと目でつかめてすぐめくれるので、バトルの決着などを一気に見せられます。描き込んだ大ゴマは、読者がそこで足を止めます
見開きを丸ごと1枚の絵にする大ゴマは、1話の中で何度も使うと効果が薄れます。いちばんの見せ場に取っておきます。
セリフとフキダシの置き方
ネームの段階で、セリフの量とフキダシの位置まで決めておきます。
セリフの種類
| 種類 | 内容 | 表し方の例 |
|---|---|---|
| セリフ | 声に出した言葉 | 通常のフキダシ |
| モノローグ | 心の中の声 | フキダシなしの文字、四角い枠 |
| ナレーション | 語り手の説明 | 四角い枠(ナレーション枠) |
| 効果音(擬音) | 動作や環境の音 | 絵の中に描き文字で |
フキダシの位置
- 先に読ませたいセリフを右上に:コマの中でも、右上から左下へ読まれます
- 次のコマへ視線をつなぐ:コマの最後のフキダシを、次のコマに近い側(左下寄り)に置くと流れがつながります
- 顔や大事な絵を隠さない:ネームの段階でフキダシの大きさも描いておくと、絵とぶつからないかを確かめられます
1つのフキダシに入れるセリフが長すぎると、絵を描くスペースがなくなります。セリフの削り方は漫画のセリフの書き方で解説しています。
ネームが進まないときのコツ
- ミニネームから始める:小さく描くと直すのが簡単なので、手が止まりにくくなります
- 1ページ目から描かない:導入はプロでも悩む部分です。株式会社Tooの「漫画の描き方」は、見せ場など描きやすい場面から先に描き、前後を埋める方法を紹介しています
- 絵を後回しにする:まず枠線とフキダシ、セリフだけで最後まで描き、セリフのないコマは状況を文字で書いておきます(同じくTooで紹介されている方法)
- 詰まった場面は空けて先へ:河原和音先生は「実践ネーム塾」で、詰まったところは2〜4ページ分空けて保留にし、描ける場面を先に描く方法を挙げています。順番に埋めるほうが合う人もいるので、やりやすいほうを選びます
ネームのセルフチェックリスト
- 流れ:右上から左下へ、迷わず読めるか。読む順番に迷うコマ間になっていないか
- 見せ場:各見開きに見せゴマがあるか。全部のコマが同じ大きさになっていないか
- ヒキとメクリ:左ページの最後に、めくりたくなる理由があるか。答えはめくった先に置いたか
- ショット:引き・寄りに変化があるか。場面の最初に位置関係が分かるコマがあるか
- セリフ:1コマにセリフを詰め込みすぎていないか。フキダシが顔や大事な絵を隠していないか
- ページ数:募集要項や掲載予定のページ数に収まっているか
ネームに使えるツール
ネームは紙とペンで十分に描けます。いきなり絵で描くのが難しいときは、先にページ・コマごとのセリフと画面の説明を文字で組み、それから絵に起こす方法もあります。
LitMemoの漫画制作では、ページの上でコマを割り(変形ゴマ・見開き・タチキリにも対応)、コマごとに画面の説明・セリフ・効果音を書き込めます。画面の説明でキャラクター名を@で呼び出すと、そのコマにキャラクター設定が結びつきます。コマごとの説明とセリフの一覧は「ネーム表 PDF」として書き出せます。登録なしで試すならマンガネームエディターから始められます。
白紙のページからは、コマ割りテンプレートで自分で割るほかに、AI漫画生成でそのページの出来事を書き、AIにコマ割り・構図・セリフの下書きを提案してもらう方法もあります。下書きはどのコマも書き直せるので、この記事で解説したポイントに沿って見直してから、「このページを生成」で各コマの絵を生成します。ネームのあとの工程はAIで漫画を作る5工程にまとめています。
まとめ
- ネームは、コマ割り・構図・セリフ・キャラの動きを簡単な絵で描いた漫画の設計図
- プロット → ページ配分 →(ミニネーム)→ ネーム → 直し、の順に進める
- 見開きで考え、左ページの最後にヒキ、めくった先にメクリを置く
- 絵は「誰か・表情・状況・コマ割り」が伝わるところまで。人に見せるネームは、表情や迫力まで伝わるように
- 詰まったら、描ける場面から描く・絵を後回しにする
