原稿を読んでくれる人がいないとき、どうするか
1話書き上げて、これが通用するのか無性に知りたくなる。
そこで一番仲のいい友人に送る。3日後、返事が来る。「面白かったよ!」
その一言では何も分からないと知りつつ、追及もしづらい。そこで掲示板に貼ってみる。2日待って、反応ゼロ。相互批評のグループに入ってみる。他人の1本を読めば自分の1本を読んでもらえる規則で、3本読んだが、まだ順番が回ってこない。
あなたの人望の問題ではありません。原稿を読むことは、相手にとってコストが高く見返りが低い行為なのです。1万文字の1話を真面目に読めば40分。読んだあとは言葉をまとめ、しかもあなたを傷つけないか気を遣う必要がある。「面白かったよ」は、実はいちばん合理的な返答です。
以下、人を待たずにできる方法を、負担の軽い順に並べます。
1. まず自分を読者に戻す
問題が見えないのは、読む力がないからではありません。この先何が起きるかを既に知っているからです。その「知っている」を一時的に切る必要があります。
- 3日置いてから読む。 最も安く、最も効きます。3日で足りなければ7日。技術より時間です。
- 媒体を変える。 印刷する、フォントを変える、スマホで読む、電子書籍リーダーに入れる。見慣れない組版の上で、目は再びゆっくり動きます。
- 音読する。 声に出して詰まる場所が、リズムの壊れている場所です。台詞には特によく効きます。
- 冒頭500文字だけ読んで自問する:これが書店で手に取った他人の本なら、次のページをめくるか。正直に答えてください。
この段階で拾えるものは、多くの人が思うより多いです——リズム、余分な語、人間の話し方をしていない台詞。拾えないのは「読者が追いかけたくなるか」で、それには他人が要ります。
2. 質問を行動に置き換える
人に聞くと決めたなら、鍵は誰に聞くかではなく何を聞くかです。
「面白い?」は誰にも答えられない質問です。大きすぎ、抽象的すぎ、しかも相手はあなたが肯定を期待していると知っている。だから「面白かったよ」が返ってきます。
行動を聞く質問に置き換えてください。
- どのあたりで、いちばん続きが読みたくなりましたか?
- 最初に気が散った/スマホを触りたくなったのはどこですか?
- 読み終えて、どのキャラクターの名前を覚えていますか?
- これが連載なら、追いかけますか?(理由は要りません)
- 読み返さないと意味が取れなかった一文はありますか?
- この話は何の話だと思いましたか?(説明できているつもりの箇所の点検になります)
利点は2つ。相手が答えやすいこと(批評家になる必要がなく、自分の身に起きたことを報告するだけ)。そして答えを原稿に戻して確かめられること。「3段落目で気が散った」は場所を指せますが、「テンポが少し遅い」は指せません。
3. 相手を選び、相手のコストを下げる
- 親友ではなく、想定読者を探す。 中華風の権謀ものを書くなら、普段それを読んでいる人に。友人は温かさを、想定読者は情報をくれます。
- 一度に1つだけ聞く。 「読んでみて」は底のない依頼ですが、「冒頭3ページだけ読んで、次のページをめくりたくなるか教えてもらえますか」は5分の依頼です。承諾率がまるで違います。
- 返事をもらったあとに説明しない。 これがいちばん難しい。「ここが分からなかった」に対して「それは実は彼が……」と返した瞬間、そのフィードバックは無効になります。読者は本の中であなたの説明を読めないからです。メモして、お礼を言う。
- 締め切りを添える。 「今週の日曜までに時間ある?なければ全然大丈夫」のほうが、「時間あるとき読んでみて」より返事が来ます。
そのまま使える文面:
1話書き上げて確かめたいことがあるので、5分だけもらえませんか。冒頭3ページだけ読んで(リンクはこちら)、2つだけ教えてください。①どこかで止まりたくなったか ②次の話を読みたいと思うか。感想は要りません、一言で大丈夫です。今週の日曜までに時間ありますか。なければ一言くれればそれで大丈夫です。
4. 意見の代わりに行動データを使う
連載しているなら、プラットフォームは既に答えを返しています。意見の形をしていないだけです。
- 話ごとの読了率:最も落ちる話が問題の話です。
- フォロワーが伸びなくなった話:たいていそこが関門になっています。
- コメントがどの部分に付いたか:読者は刺さった場所にコメントします。
これらの数字は慰めてくれませんが、遠慮もしませんし、知り合いだからと嘘もつきません。
5. AI試し読み:できることと、できないこと
AIは、人がいないときにあなたの原稿を読めます。ただし、できないことを先にはっきりさせないと、専門的に見えて情報のないものを受け取ることになります。
点数を聞かないこと。 私たちは実際の原稿5本で約140回測りました。同じAI読者がまったく違う5本に同じ点数をつけ、ペルソナに「低い点はつけない」と一行書けば満点が出て、同じ原稿を再実行するとブロック平均値が0.2〜0.6ずれます。詳細はこちらの記事にあります。
行動を聞き、原文を引用させること。 「どの一文で止まったか」「どこで最も続きが読みたくなったか」——この種の答えは原稿に戻して確かめられ、改稿で実際に使えます。
人の代わりにならない部分:AIは待つ根気を持たず、口コミを起こさず、3か月後に「あの結末をまだ考えている」と言ってくれることもありません。本当の読者との関係は別のものです。AIにできるのは、「誰も読んでいない」を「改稿の前に少なくとも一つの声が読んだ」に変えることです。
LitMemoのAI試し読みレポートは、まさにこの線引きで設計しています。レポートの1行目は点数ではなく「何人が読み進めたいか」で、すべての指摘があなた自身の原文を伴い、ワンクリックで原稿に戻して見ながら直せます。
おわりに
原稿を読んでもらうことの残酷さは、フィードバックが最も必要な時期が、たいてい読者がまだいない時期と重なっていることです。
上の5つのうち、1つ目(3日置く・媒体を変える・音読する)は今日できて、しかも無料です。2つ目(質問を行動に置き換える)は、AIを含め誰から得る反応の質も即座に改善します。残りはゆっくりで構いません。
LitMemo