マンガのコマ割りのやり方:初心者が最初に覚える基本ルールと、1ページを文字で割る練習法
コマ割りは、絵の上手い下手よりも先に「読みやすさ」を決める工程です。同じ絵でも、コマの大きさと順番が変わるだけで、見せ場が見せ場として伝わるかどうかが変わります。
この記事では、まず覚えておきたい基本ルールを押さえたうえで、ひとつのシーンを文字に書き出して、1ページに割っていく手順を記入例つきで紹介します。絵に自信がなくても、この手順なら今日から練習できます。
コマ割りとは
コマ割りとは、マンガのページをいくつかのコマに分け、読む順番・時間の流れ・見せ場の大きさを決める作業です。
- 読む順番:どのコマから読み、どこで次のページへ進むか
- 時間の流れ:一瞬の出来事を1コマで見せるか、数コマに分けてゆっくり見せるか
- 見せ場の大きさ:どの場面をいちばん大きく見せるか
小説でいえば、段落の区切りと改行に近い役割です。文章のリズムが改行で変わるように、マンガのリズムはコマ割りで変わります。
コマ割りとネームの関係
ネームは、コマ割り・構図・セリフをまとめたマンガの設計図です。コマ割りはその中の一部で、ネームを描くときに最初に決めるのがコマ割りです。ネーム全体の描き方はマンガのネームの書き方で詳しく解説しています。
まず覚えたい基本ルール6つ
1. 右から左、上から下へ読ませる
日本のマンガは、右上から読み始めて左へ進み、段の左端まで来たら、階段を下りるように次の段の右端へ戻ります。このジグザグの流れで、視線はページの右上から左下へ進みます。この流れに逆らう配置(左のコマを先に読ませたいのに右に置く、など)をすると、読者は順番に迷います。
2. コマ間(コマとコマのすき間)で順番を伝える
コマとコマの間のすき間をコマ間といいます。一般に、左右に並ぶコマの間は狭く、上下の段の間(段間)は広くとります。こうすると「同じ段を横に読んでから下の段へ」という順番が、説明しなくても伝わります。
3. 大ゴマで見せ場を決める
すべてのコマが同じ大きさだと、どこが大事なのかが伝わりません。1ページの中で「いちばん見せたい場面」をひとつ決め、そのコマを大きくとります。これを見せゴマや大ゴマと呼びます。見せゴマの位置と大きさを先に決め、その前後のコマを読む順番に沿って配置していくのが基本の手順です。
4. タチキリで広がりを出す
コマや絵を内枠の外、仕上がりの紙の端(断ち切り線)までいっぱいに伸ばす見せ方をタチキリといいます。画面が紙の外まで続いているように見えるので、景色の広がりや迫力を出したい場面に向いています。多用すると効果が薄れるので、見せゴマに絞って使います。
5. 見開きで考え、ページの最後に「引き」を置く
読者は、右ページと左ページを同時に目にします。コマ割りは1ページずつではなく、見開き(2ページ)単位で考えるのが基本です。
特に大事なのが、左ページのいちばん最後のコマです。ここで「次はどうなる?」と思わせる場面(引き)を置くと、読者はページをめくりたくなります。逆に、めくった直後の右ページ最初のコマは、驚きや答えを見せる場所になります。この効果をめくりと呼び、引きとめくりはセットで考えます。
6. 変形ゴマは効果を決めてから使う
斜めの枠や、四角以外の形のコマ(変形ゴマ)は、衝撃やスピード感を出したり、斜めの線で視線を次のコマへ流したりするのに効果的です。ただし使いすぎると、読む順番が分かりにくくなります。「このコマで何を強調したいか」が言えるときだけ使うのが安全です。
1ページを文字で割る手順
絵を描き始める前に、シーンを文字で書き出してから割ると、構成の迷いが減ります。手順は5つです。
- シーンを文字で書き出す:何が起きるか、誰が何を言うかを、箇条書きで並べます。
- 「瞬間」に分ける:読者に1回ずつ見せたい瞬間を、ひとつずつ区切ります。1つの瞬間がおおむね1コマになります。
- 見せゴマを決める:区切った瞬間の中から、このページでいちばん見せたい瞬間をひとつ選びます。
- 大きさを割り振る:見せゴマを大きく、つなぎの瞬間を小さくします。段の数と、各段に何コマ入れるかを決めます。
- セリフの順番を確かめる:フキダシを置いたときに、右上から左下への流れで自然に読めるかを確認します。
文字で書き出す段階の書式は、漫画脚本・字コンテ テンプレートがそのまま使えます。1コマにつき1行で、画面・セリフ・構図(アングル)をメモしていく形式です。
記入例:雨の日のシーンを1ページに割る
例として、次の短いシーンを1ページに割ってみます。
放課後、急な雨。昇降口で立ち尽くす主人公に、同じクラスの子が黙って傘を差し出す。主人公が顔を上げると、その子はもう雨の中を走り出している。
手順1〜2:文字に書き出して瞬間に分ける
| # | 起きること | セリフ |
|---|---|---|
| 1 | 昇降口の外、強い雨 | (効果音)ザアアア |
| 2 | 空を見上げて困る主人公 | 「……傘、忘れた」 |
| 3 | 横から傘が差し出される(手元だけ) | 「使って」 |
| 4 | 主人公が顔を上げる | 「え、でも——」 |
| 5 | その子が傘なしで雨の中へ走り出す後ろ姿 | 「明日返して!」 |
| 6 | 傘を握ったまま見送る主人公 | ― |
手順3:見せゴマを決める
このページでいちばん見せたいのは、**5の「走り出す後ろ姿」**です。主人公の気持ちが動く瞬間であり、次のページへの引きにもなります。
手順4:大きさを割り振る
| 段 | コマ | 内容 | 大きさ | ねらい |
|---|---|---|---|---|
| 1段目 | 1 | 強い雨 | 横長・中 | 雨の強さで状況を一目で |
| 2段目・右 | 2 | 困る主人公 | 小 | 困った表情だけを短く |
| 2段目・左 | 3 | 差し出される傘 | 小 | 手元のアップ。誰の手かはまだ隠す |
| 3段目 | 4 | 顔を上げる主人公 | 横長・細め | 次の大ゴマへの助走 |
| 4段目・右〜中央 | 5 | 走り出す後ろ姿 | 大・タチキリ | 見せゴマ。雨の広がりをページの外まで |
| 4段目・左端 | 6 | 見送る主人公 | 縦長・細め(ページ左下) | 余韻と引き。ページをめくる手前に |
2段目の2コマを小さく並べることで、「困る → 傘が出てくる」までがテンポよく進みます。そのぶん、4段目の大ゴマで時間がゆっくり流れるように感じられます。4段目は右から左へ「走り出す後ろ姿 → 見送る主人公」と読まれるので、時間の順番どおりに進み、見送る主人公がページ最後のコマ(引き)になります。
手順5:セリフの順番を確かめる
「……傘、忘れた」→「使って」→「え、でも——」→「明日返して!」が、右上から左下への流れに沿って並んでいるかを見ます。3のフキダシを、手が出てくる側(右側)に置くと、「誰かが声をかけた」順番が自然に伝わります。
よくある失敗と直し方
- 全部のコマが同じ大きさ:見せ場が分からず、単調な印象に。→ 見せゴマをひとつ決めて大きく
- 読む順番に迷う:左右どちらへ進むか分からない。→ 左右のコマ間を狭く、段間を広く
- 1コマに情報を詰めすぎる:動きとセリフが多すぎて読みにくい。→ 1コマに1つの瞬間を目安に分割
- 変形ゴマを多用する:どこが大事か分からない。→ 効果を説明できるコマだけに
- 左ページの最後に何もない:ページをめくる理由がない。→ 最後のコマに問いかけや予感(引き)を
コマ割りが上手くなる練習法
いちばん効果があるのは、好きなマンガの1ページを文字に起こす練習です。絵を写すのではなく、上の記入例と同じ表に「このコマはどの瞬間か」「なぜこの大きさか」を書き出します。
何ページか続けると、同じ作家が同じ種類の場面で似た割り方をしていることに気づきます。それが、その作家の「リズム」です。気づいたことを自分のページで試し、読みやすくなったかを比べていきます。
縦スクロールのマンガ(ウェブトゥーン)は、ページではなくスクロールでテンポを作るので、割り方の考え方が大きく変わります。縦スクのコマ割りは縦スクロール漫画のコマ割りで解説しています。
コマ割りを試せる道具
コマ割りは紙と鉛筆でも練習できますが、何度も割り直すならデジタルのほうが手早く試せます。
LitMemoの無料マンガネームエディタでは、登録なしでブラウザ上でコマを割り、セリフを置くところまで試せます。多角形のコマや重ねゴマも作れます(お試し用の絵は、あらかじめ用意されたサンプルです)。
登録後の漫画制作では、ネームのページを見開き幅に広げて大ゴマを配置したり、コマごとにキャラクター設定を反映させたりできます。作画はお手持ちのソフトで描いた絵をコマごとに取り込んでも、AIで生成してもかまいません。
まとめ
- コマ割りは、読む順番・時間の流れ・見せ場の大きさを決める作業
- 右から左、上から下。コマ間は左右を狭く、段間を広く
- 見せゴマを先に決め、前後のコマを読む順に配置
- 見開きで考え、左ページの最後に引き、めくった先に答え
- 絵を描く前に、シーンを文字で瞬間に分けてから割ると迷いが少ない
LitMemo