箱書きとは?小説での書き方とプロットとの違い【見本つき】

箱書きとは、物語をシーン(場面)ごとに区切り、1シーンを1つの「箱」として、そこで起きることと場面の役割を書き出したものです。もとは映画やテレビドラマの脚本(シナリオ)を書く前の準備を指す言葉で、小説でもプロットから本文に入る前の段取りとしてそのまま使えます。

箱書きは次の5ステップで作れます。

  1. プロットを用意する(一行あらすじと結末が決まっていればよい)
  2. 大きな区切りの箱(大箱)を作る(起承転結なら4つ、三幕構成なら3つ)
  3. 出来事をシーン単位の箱(小箱)に分けて、大箱に入れる
  4. 箱ごとに「場面の役割」と「人物の気持ちの変化」を書く
  5. 箱を並べ替えながら、通しで流れを確かめる

後半に、短編1本分の箱書き見本と、長編で使うときの大箱・中箱・小箱の分け方を載せています。

なお、書画や陶磁器を収める箱に作者が題や署名を書く「箱書」も同じ字を書きます。創作で「箱書き」というときは、構成づくりの作業のほうを指します。

箱書きとは:名前の由来と使われ方

辞書では、箱書きは「シナリオを作成する際、あらかじめ各シーンごとに要点を書きとめておくこと」(デジタル大辞泉)と説明されています。精選版日本国語大辞典によると、名前の由来は、縦横の罫線で箱の枠を作り、その中に1シーンずつ書き込んだことです。

映画やテレビドラマの脚本づくりでは、本文に入る前に、物語の展開や人物の関係をシーンごとの箱書きにまとめる方法が使われてきました。現場では「ハコ」「ハコ書き」とも呼ばれます。シーンを1つずつ独立させて書くので、順番の入れ替えや、増やす・削るといった組み直しを本文を書く前にできるのが強みです。

箱書き・プロット・あらすじの違い

何を書くか単位いつ作るか
プロット物語全体の流れを、出来事の因果でつないだ設計図物語全体・章書き始める前
箱書きプロットをシーンに分け、各シーンで起きることと役割を書いたものシーン(場面)プロットのあと、本文の直前
本文実際に読者が読む文章文・段落箱書きのあと
あらすじ物語の要約物語全体企画の段階(企画書・持ち込み用)、または書き上げたあと(応募・紹介用)

プロットが「何が起きる話か」を決めるものだとすると、箱書きは「それをどの場面で、どの順番で見せるか」を決めるものです。プロットの書き方は小説プロットの書き方で詳しく紹介しています。

箱に書く項目

1つの箱に書くのは次の項目です。最初の4つが埋まっていれば、本文に入れます。

項目何を書くか例
場所・時間どこで、いつの場面か写真館の店内/三月の朝
視点人物誰の目から語る場面か(小説では特に大事)葵
登場人物場面に出る人物葵、祖父
出来事この場面で起きること(一〜三文)閉店の貼り紙を貼る
場面の役割物語全体の中で、何のためにある場面か店が終わることを見せる
気持ちの変化場面の始まりと終わりで、視点人物の気持ちがどう動くか平静 → 後ろめたさ
伏線張る・進める・回収するもの張る:祖父の右手の震え
目安の字数この場面に使う字数約1,000字

見本のように、登場人物が出来事の文からわかるときは、登場人物の行を省いてもかまいません。脚本の箱書きでは、重要なセリフや演出のポイントを書き足すこともあります。小説で使うなら、視点人物を必ず書いておくのがおすすめです。場面ごとに誰の目で語るかを先に決めておくと、本文で視点がぶれにくくなり、群像劇でも視点の偏りがひと目でわかります。

箱書きの書き方5ステップ

ステップ1:プロットを用意する

箱書きは、プロットをもとに作ります。細かいプロットは要りません。「誰が・何をしようとして・何に阻まれるか」の一文と、結末が決まっていれば始められます。

ステップ2:大箱を作る

最初に、物語を大きく区切る箱(大箱)を作ります。起承転結なら4つ、三幕構成なら3つ、序破急なら3つです。長編なら、部や巻を大箱にしてもかまいません。

ステップ3:出来事を小箱に分けて入れる

プロットに書いた出来事を、シーン単位の小箱に分けて、大箱に入れていきます。目安は、場所・時間・視点人物のどれかが変わったら次の箱にすることです。プロットでは1行だった出来事が、箱書きでは2〜3個の箱に分かれることもよくあります。

ステップ4:箱ごとに役割と変化を書く

1つずつの箱に、場面の役割と気持ちの変化を書きます。ここがいちばん大事な作業です。

  • 役割が書けない箱は、削るか、前後の箱とまとめます
  • 気持ちが動かない箱は、出来事を足すか、視点人物を変えられないか考えます
  • 役割が重なる箱が続いたら、どちらか一方にまとめます

ステップ5:並べ替えて通しで確かめる

最後に、箱を最初から順に読み、次の点を確かめます。

  • 隣り合う箱が、「それから」の羅列ではなく、「だから」(因果)や「ところが」(転換)でつながるか
  • 伏線を張る箱と回収する箱の両方があるか
  • 視点人物や登場人物が、一部の箱に偏っていないか
  • 目安の字数の合計が、予定の長さに収まっているか

つながりの弱いところは、箱の順番を入れ替えるか、間に箱を1つ足すと直ることが多いです。箱の段階なら、本文を書き直さずに組み直せます。

箱書きの見本:短編(約1万字・9シーン)

小説プロットの書き方で紹介した短編『写真館の最後の一枚』(全5場面のプロット)を、箱書きにした見本です。作品・人物はすべて創作です。

作品名:『写真館の最後の一枚』 現代ドラマ/短編・約1万字
一行あらすじ:閉店が決まった写真館の孫娘が、祖父が撮ったまま受け取られなかった
       写真の持ち主を探す。けれど、祖父は何も話そうとしない。

━━━ 大箱【起】 ━━━
[箱1]写真館の店内/三月の朝 視点:葵 人物:葵、祖父 約800字
 出来事:閉店の貼り紙を貼る。祖父は黙って脚立を押さえている。
 役割 :店が終わることと、葵が「継がない」とまだ言えていないことを見せる
 変化 :平静 → 後ろめたさ

[箱2]店の奥の作業場/同じ日の午後 視点:葵 人物:葵、祖父 約1,000字
 出来事:片付けの途中、引き出しから受け取られなかった写真が出てくる。
     裏には日付と「必ず取りに来ます」のメモ。祖父は「取りに来なかった客だ」とだけ言う。
 役割 :物語の謎を置く
 変化 :後ろめたさ → 好奇心
 伏線 :張る:店のカメラを手入れする祖父の右手が震え、ピントリングを回すのを葵に任せる

━━━ 大箱【承】 ━━━
[箱3]店頭/翌日の昼 視点:葵 人物:葵、町の人たち 約1,200字
 出来事:閉店を知った町の人が、昔の記念写真を見せに来る。写真の女性を知る人はいないが、
     常連の一人が「花屋さんなら昔のことをよく覚えている」と教えてくれる。
 役割 :写真館が町の記憶を預かってきたことを、葵が初めて実感する
 変化 :好奇心 → 行き詰まり

[箱4]商店街の花屋/同じ日の夕方 視点:葵 人物:葵、花屋の店主 約1,000字
 出来事:花屋の店主が日付を見て「大雪で列車が止まった日だ。駅で足止めされた人を、
     町じゅうで泊めた」と思い出す。
 役割 :謎を次の手がかりへつなぐ
 変化 :行き詰まり → 手がかりを得る

[箱5]店の2階の物置/その夜 視点:葵 人物:葵 約1,200字
 出来事:古い受付台帳のその日の欄に、祖父の字で「雪の客 母子 一泊」と、名字と県外の町名。
     台帳には、写真館が足止めの乗客を2階に泊めたという地方紙の小さな記事が挟んである。
     写真は店に泊まった母子で、翌朝列車が動き、母子は現像を待たずに町を離れていた。
     葵は写真館のSNSに、台帳の町名と日付を添えて持ち主を探す投稿をする。
 役割 :祖父の知らない一面を明かし、葵が自分から動く
 変化 :手がかりを得る → 祖父への誇らしさ

[箱6]店内/翌朝 視点:葵 人物:葵、祖父 約800字
 出来事:葵が雪の夜のことを尋ねるが、祖父は「昔の話だ」と話を切り上げる。投稿への返事はまだない。
 役割 :祖父と葵のすれ違いを深め、転換点の前に溜めを作る
 変化 :誇らしさ → もどかしさ

━━━ 大箱【転】 ━━━
[箱7]店頭/最終営業日の前日 視点:葵 人物:葵、祖父、写真の女性 約1,500字
 出来事:知人から投稿を教えられた25歳の女性が、県外から来店する。写真の赤ん坊本人で、母は遺品のノートに
     「宮下さんに写真を取りに行けなかった」と書き残していた。
     祖父は写真を手渡し「写真屋は、渡すまでが仕事だ」と言う。
 役割 :転換点。葵は、店を残すことより、預かった写真を渡しきることが祖父の仕事だったと気づく
 変化 :もどかしさ → 納得

━━━ 大箱【結】 ━━━
[箱8]店の前/最終営業日の夕方 視点:葵 人物:葵、祖父 約1,500字
 出来事:葵は初めて「店は継がない」と言う。祖父は「知ってた」と笑う。
     手の震える祖父の代わりに、葵が祖父のカメラで店の前に立つ祖父を撮る。
 役割 :結末。継がなくても、祖父の仕事を受け取ったことを示す
 変化 :納得 → 晴れやかさ
 伏線 :回収:箱2の右手の震え

[箱9]暗室/閉店の夜 視点:葵 人物:葵、祖父 約800字
 出来事:現像した最後の一枚を、葵が祖父に手渡す。
 役割 :余韻。題名の「最後の一枚」を、葵が祖父に「渡す」ことで締める
 変化 :晴れやかさ → 自分を許す

この箱書きでは、プロットの段階から次の4か所が変わっています。

  • プロットの場面2「町の人たち」を、箱3と箱4の2つに分けた:場所と時間が変わるので、花屋の場面を独立させました
  • 箱6を足した:プロットでは「祖父は取り合わない」の一行でしたが、箱にすると、転換点の前の溜めが足りないとわかりました
  • プロットの場面5を、箱8と箱9に分けた:撮影と現像は場所も時間も違うので、別の箱にしました
  • 字数を箱ごとに割り振った:合計が約1万字に収まるかを、本文に入る前に確かめられます

このように、箱に分けて「役割」と「変化」を書くと、プロットでは見えなかった抜けや詰め込みが見つかります。

長編では大箱・中箱・小箱に分ける

長編では、箱を3段に分けると管理しやすくなります。大きい順に大箱・中箱・小箱と呼んで区別すると、話がしやすくなります。

箱小説での単位例(全20章の長編)
大箱幕・部・巻第二部(第7〜12章)
中箱章・話第7章「境界石」
小箱シーン宿場への道/境界石/境界の村/夜の地図

長編の箱書きは、最初から全部の小箱を作らなくてかまいません。大箱と中箱で全体を決めておき、小箱は「次に書く1〜3章分」だけ作ると、書きながら展開が変わっても作り直す範囲が小さくて済みます。

箱書きは何に書く?

形式は自由です。自分が見渡しやすく、入れ替えやすいものを選んでください。

書く道具向いている使い方
付箋・カード1シーン1枚。机や壁に並べて、手で入れ替えながら考えたいとき
ノート・テキストファイル上の見本のように、箱を線で区切って縦に並べる。短編向き
表計算ソフト1行1シーン、列に項目を並べる。章が多い長編や、視点人物の偏りを確かめたいとき
執筆ツール箱にキャラクターや伏線をひも付けて、本文の章とつなげておきたいとき

箱書きで詰まったとき

詰まり方よくある原因直し方
箱が多すぎて全体が見えない最初から小箱を作っている大箱だけに戻し、各大箱に入れる出来事を3つまでに絞る
役割が書けない箱が続く出来事を順に並べただけになっているその箱がなかったら結末に何が欠けるかを考え、欠けないなら削る
中盤の箱が埋まらないプロットの中盤の出来事が足りないプロットに戻って、中盤に転機を1つ足す
視点人物が一人の箱ばかりになる群像劇なのに主人公目線で並べている視点人物の列を作り、偏りを見ながら箱を割り振る
箱書きどおりに本文が書けない書きながら新しい展開を思いついた先の箱を書き換えてから進む。箱は何度直してもかまいません

LitMemoで箱書きを作る

創作管理ツール LitMemo の「ストーリープロット」では、プロットの項目を「第一幕」「第一部」などのグループに分けて並べられます。グループを大箱、プロット項目を1つずつの箱として使うと、箱書きをそのまま作れます。

  • 各項目に、登場するキャラクター・設定・伏線をひも付けられます
  • 思いついた場面は「ネタ出し」欄にメモしておき、使うものだけを「プロットに昇格」ボタンで箱(プロットの項目)にできます
  • 箱が固まったら、「話として展開」でその箱から新しい話(章)を作り、本文を書き始められます

章ごとの出来事・登場人物・伏線を1行ずつ表で並べたい人は、小説プロットのテンプレートも使えます。

さらに読む

よくある質問

箱書きとは何ですか?
物語をシーン(場面)ごとに区切り、1シーンを1つの「箱」として、そこで起きることと場面の役割を書き出したものです。もとは映画やドラマの脚本を書く前の準備を指す言葉で、名前は罫線で作った箱の枠に1シーンずつ書き込んだことに由来します。小説でも、プロットから本文に入る前の段取りとして使えます。
箱書きとプロットの違いは何ですか?
プロットは物語全体の流れを、出来事の因果でつないだ設計図です。箱書きはそのプロットをシーン単位に分け、各シーンの場所・時間・登場人物・出来事・場面の役割を書いたものです。プロットが「何が起きる話か」、箱書きが「それをどの場面で、どの順番で見せるか」を決めます。
小説でも箱書きは必要ですか?
必須ではありません。掌編や短い短編なら、プロットから直接本文に入っても書けます。長編や、視点人物が何人もいる話では、箱書きを作っておくと場面の順番や視点の偏りを本文を書く前に直せます。
箱はいくつ作ればいいですか?
決まった数はありません。まず起承転結や三幕構成で大箱を3〜4つ作り、そこにシーン単位の小箱を入れていくと、作品に必要な数が見えてきます。長編では、小箱は次に書く1〜3章分だけ作れば十分です。
箱書きはどんな形式で書けばいいですか?
自分が見渡しやすく、入れ替えやすい形なら何でもかまいません。付箋やカードに1シーン1枚で書く、ノートに線で区切って並べる、表計算ソフトで1行1シーンにする、などの方法があります。
箱書きどおりに書けなくなったらどうすればいいですか?
先の箱を書き換えてから進んでください。箱書きは本文を書くための段取りなので、書きながら見えてきたことに合わせて何度直してもかまいません。結末につながる箱が残っているかだけは、直すたびに確かめておきます。