あらすじの書き方|新人賞に出す小説のあらすじ(梗概)と例文
新人賞や公募に添えるあらすじ(梗概)は、物語の始まりから結末までを、伏せずに順を追って要約した文章です。小説の応募用のあらすじは、次の5ステップで書けます。
- 物語を一文にまとめる(誰が・何をしようとして・どうなるか)
- 結末を先に書く
- 結末までの転換点を3〜5個選ぶ
- 転換点を出来事の起きた順につなぎ、規定字数を目安に一通り書く
- 規定の字数に合わせて削る・足す
選考する人に向けて書く応募用のあらすじは、Web小説の紹介欄や文庫の裏表紙に載せる作品紹介文とは書き方が違います。2つの違いは下の表のとおりです。後半に、同じ物語のあらすじを400字以内・800字以内の2パターンで書いた例文を載せています。
応募用のあらすじと作品紹介文の違い
「あらすじ」と呼ばれる文章には、目的の違う2種類があります。
| 応募用のあらすじ(梗概) | 作品紹介文 | |
|---|---|---|
| 読む人 | 下読み・編集者・選考委員 | これから読むかどうかを決める読者 |
| 目的 | 物語の内容を正確に伝える | 読みたいと思わせる |
| 結末 | 書く | 伏せる |
| 長さ | 応募要項の規定どおり(800字前後が多い) | 短め(媒体の欄に収まる長さ) |
| 文体 | 飾らない説明の文章 | 引きのある宣伝の文章 |
| 載せる場所 | 応募原稿の冒頭など、要項が指定する場所 | 投稿サイトの紹介欄、文庫の裏表紙、書店の紹介文 |
応募用のあらすじで「〜の運命は!?」のように結末を伏せると、内容が伝わらないうえ、要項の指示を守っていない原稿になります。読者向けの紹介文とは別に、結末まで書いたものを用意してください。
字数は応募要項の規定に合わせる
あらすじの字数や書く場所は、賞ごと、回ごとに決まっています。次の表は過去の募集要項の例です。規定は回ごとに変わるので、応募前に公式の要項を確認してください。
| 賞 | あらすじの規定 |
|---|---|
| 電撃小説大賞(Web応募) | 原稿ファイルの0ページ目(本文1ページ目の前のページ)に、作品タイトル・ペンネームとあわせて「あらすじ(800字以内)」を記載 |
| 電撃小説大賞(カクヨム応募) | 作品の「紹介文」欄に、あらすじを800字程度で書く |
| 小説現代長編新人賞 | 原稿の1枚目に「梗概(800字から1200字程度)」をつける |
同じ賞でも、応募方法(Web応募か、投稿サイト経由か、郵送か)によって指定が変わることがあります。投稿サイト経由の応募では、読者も読む紹介欄にあらすじを書くよう指定される場合もあります。その場合は、結末まで書くかどうかを含めて、要項の指定に従ってください。書き始める前に、応募する回の要項で、字数・書く場所・書式の3点を確かめておきましょう。
あらすじの書き方5ステップ
例として、『写真館の最後の一枚』という物語のあらすじを作っていきます。作品・人物はすべて創作です。公募では、あらすじの字数は作品の長さではなく要項で決まります。ここでは書き分けを見せるために、同じ物語で400字版と800字版を作ります。プロットと場面ごとの構成は小説プロットの書き方と箱書きの書き方に載せています。
ステップ1:物語を一文にまとめる
まず、作品を一文で言えるようにします。入れるのは「誰が」「何をしようとして」「どうなるか」です。
閉店が決まった写真館の孫娘・葵が、祖父が撮ったまま受け取られなかった写真の持ち主を探すうちに、店を継がないと決めた自分を許せるようになる。
この一文が、あらすじ全体の軸になります。あとで迷ったら、この一文に関係ある出来事かどうかで、書くか削るかを決めます。
ステップ2:結末を先に書く
次に、結末を一〜二文で書きます。応募用のあらすじでいちばん大事なのは、物語がどう終わるかを伝えることです。
最終営業日、葵は初めて「継がない」と祖父に告げる。手の震える祖父に代わってシャッターを切り、店を継がない自分を許せるようになる。
結末が書けないときは、原稿のほうで結末がまだ固まっていない可能性があります。
ステップ3:結末までの転換点を3〜5個選ぶ
結末から逆にたどり、「なぜそうなったのか」に答える出来事を3〜5個選びます。
- 受け取られなかった写真を見つける
- 撮影日が大雪で列車が止まった日で、写真館が足止めの母子を泊めていたとわかる
- だから葵は、写真館のSNSに台帳の町名を添えて持ち主を探す
- すると、知人から投稿を教えられた、写真の赤ん坊だった女性が店を訪ねてくる
- 祖父の「写真屋は、渡すまでが仕事だ」という言葉で、葵は祖父にとって大事だったのが店を残すことより写真を渡しきることだったと気づく
選んだ出来事が「だから」「ところが」「すると」のような因果や展開でつながれば、あらすじの骨組みはできています。「それから」でしかつながらない出来事があれば、あいだに抜けている出来事を探します。
ステップ4:出来事の起きた順につなぎ、規定字数を目安に一通り書く
骨組みに、冒頭の状況(主人公は誰で、どんな状態か)を足し、出来事の起きた順に文章でつなぎます。最初は字数を気にしすぎず、規定字数を目安に一通り最後まで書き、次のステップで調整します。
書くときの注意は次の4つです。
- 最初の一〜二文で、主人公と状況を示す
- 登場人物は、結末に関わる人に絞る(名前を出すのは主人公と数人まで)
- 回想や時間の入れ替えがある作品は、現在の時間軸(主人公が体験し、知っていく順)に沿って書く(過去の真相が最後に明かされる構成なら、「やがて、過去に〜があったとわかる」と流れの中に組み込む)
- 比喩や凝った言い回しは使わず、説明の文章で書く
ステップ5:規定の字数に合わせて削る・足す
規定より長いときは、結末に影響しない脇筋や、場面の細かい描写から削ります。規定よりかなり短いときは、主人公の気持ちの変化と、転換点の理由を書き足します。
あらすじの例文①:400字以内(352字)
閉店が決まった地方の写真館。店主の孫である高校三年生の宮下葵は、店を継がないことを祖父に言えずにいる。片付けの途中、葵は二十五年前に撮られたまま受け取られなかった母子の写真を見つける。祖父は何も語らない。持ち主を探すうちに、撮影日は大雪で列車が止まった日で、写真館が足止めされた母子を泊め、祖父が二人を撮っていたことがわかる。葵が写真館のSNSで持ち主を探すと、最終営業日の前日、写真の赤ん坊だった女性が店を訪れる。祖父は写真を手渡し「写真屋は、渡すまでが仕事だ」と言う。祖父にとって大事なのは店を残すことより、預かった写真を渡しきることだったと知った葵は、最終日に初めて「継がない」と告げる。そして手の震える祖父に代わってシャッターを切り、店の前に立つ祖父を撮って、店を継がない自分を許せるようになる。
400字だと、入るのは「主人公と状況」「謎」「手がかり」「転換点」「結末」までです。花屋の店主など、謎を解く途中の人物や、受付台帳のような手がかりの細部は省いています。
あらすじの例文②:800字以内(797字)
地方の町で三代続いた写真館「ミヤシタ」が、春に店を閉めることになった。店主の孫で高校三年生の宮下葵は、県外の大学に進むと決めているが、店を継がないことを祖父にまだ言えずにいる。
閉店の準備の途中、葵は作業場の引き出しから、受け取られなかった一枚の写真を見つける。若い女性が赤ん坊を抱いた写真で、裏には二十五年前の日付と「必ず取りに来ます」というメモがあった。祖父は「取りに来なかった客だ」としか言わない。
葵は閉店を知って訪ねてくる町の人に写真を見せて回るが、女性を知る人はいない。花屋の店主が、その日は大雪で列車が止まり、駅で足止めされた乗客を町じゅうで泊めた日だと思い出す。古い受付台帳を調べた葵は、その日の欄に祖父の字で「雪の客 母子 一泊」という書き込みと、名字と県外の町名を見つける。あの夜、写真館は足止めされた母子を二階に泊め、祖父は二人を撮っていた。翌朝、列車が動くと、母子は現像を待たずに町を離れたのだ。葵は写真館のSNSに、台帳の町名と日付を添えて、写真の持ち主を探す投稿をする。祖父は「昔の話だ」と取り合わない。
最終営業日の前日、知人から投稿を教えられた二十五歳の女性が、県外から店を訪ねてくる。写真の赤ん坊本人だった。数年前に亡くなった母の遺品のノートに「宮下さんに写真を取りに行けなかった」と書かれていたという。祖父は写真を手渡し、「写真屋は、渡すまでが仕事だ」とだけ言う。祖父にとって大事なのは、店を残すことより、預かった写真を渡しきることだった。葵はそう気づき、祖父にもう心残りがないことを知る。
最終営業日、葵は初めて「店は継がない」と告げる。祖父は「知ってた」と笑う。手の震えでピントが合わせられなくなった祖父に代わり、葵は祖父のカメラで、店の前に立つ祖父を撮る。その夜、暗室で現像した最後の一枚を手渡したとき、葵は店を継がない自分を、ようやく許せるようになっていた。
800字では、400字版に加えて、次の3つを書き足しています。
- 写真の裏のメモと、写真が残っていた理由(「必ず取りに来ます」、現像を待たずに町を離れた):謎がなぜ謎なのかを伝える
- 手がかりをたどる過程(花屋の店主の記憶、受付台帳の書き込み):葵が自分で動いて真相に近づいたことを見せる
- 祖父との具体的なやり取り(「取りに来なかった客だ」「昔の話だ」「知ってた」):葵と祖父のすれ違いが結末で解ける流れを見せる
どちらの例文も、結末で主人公がどう変わったかまで書いています。応募用のあらすじは、事件の結末と主人公の変化の両方が伝われば十分です。
作品紹介文を書くときは
Web小説の投稿サイトの紹介欄や、文庫の裏表紙に載せる作品紹介文は、読者に「読みたい」と思わせるための文章です。応募用のあらすじと違い、次のように書きます。
- 冒頭の状況と、物語が動き出すきっかけまでを書く
- 結末と、転換点の中身は伏せる
- 最後に、読者が知りたくなる問いを残す
同じ作品の作品紹介文の例です(122字)。
閉店まで、あと十日。町の写真館の引き出しから出てきたのは、二十五年間、誰も取りに来なかった一枚の写真だった。写っている母子は誰なのか。なぜ祖父は、二十五年もその写真を捨てずにいたのか。店を継がないと言えない孫娘が、最後の一枚を届けるまでの物語。
応募用のあらすじと作品紹介文は、同じ作品から作っても中身が大きく変わります。応募するときに紹介文をあらすじ欄に書かないよう、2つは別々に用意しておきましょう。
提出前のチェックリスト
- 応募要項の字数・書く場所・書式に合っている
- 結末まで書いている(「〜の運命は?」で終わっていない)
- 最初の一〜二文で、主人公と状況がわかる
- 主人公が何をしようとして、どんな問題(謎や葛藤)に向き合い、どうなったかがわかる
- 転換点の理由が「だから」「ところが」でつながっている
- 主人公の最初と最後の変化がわかる
- 登場人物の名前が多すぎない
- 本文と、人名・地名・用語の表記がそろっている
プロットからあらすじを作る
プロットを場面ごとにまとめてあれば、あらすじの下書きは早く作れます。場面ごとの出来事を、上から順に一文ずつ要約して並べ、ステップ3で選んだ転換点以外を削っていけば、骨組みができます。
創作管理ツール LitMemo の「ストーリープロット」では、プロットの項目をグループごとに並べ、項目ごとに登場するキャラクターや伏線をひも付けられます。項目に書いた出来事を上から読んでいくと、あらすじに入れる出来事を拾いやすくなります。
応募前の原稿の準備については、小説を投稿する前のチェックもあわせて読んでください。
さらに読む
- あらすじのもとになる設計図 → 小説プロットの書き方
- 場面ごとに構成を決める → 箱書きの書き方
- 投稿の前に → 小説を投稿する前のチェック
- 冒頭の書き方 → 小説の書き出しテクニック
