地の文とは?意味を簡単に|小説の地の文の書き方と例文・8つのコツ
地の文(じのぶん)とは、小説のうち会話(セリフ)以外の部分、つまり説明や叙述の文章のことです(デジタル大辞泉)。「」でくくられたセリフ以外の、場面・動作・五感・心の中を書いた文は、すべて地の文にあたります。
「遅い」 柚木は腕時計から目を上げずに言った。改札の向こうで、最終の一本前の電車が出ていく。 「五分だけだろ」 「その五分で、私はもう一本見送ったの」
1行目と3・4行目がセリフ、2行目が地の文です。地の文が「誰が言ったのか」「どこで、どんな空気なのか」を補い、セリフだけでは見えない場面を立ち上げています。
地の文と会話文・ト書きの違い
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 地の文 | 小説・物語で、会話以外の説明や叙述の文章。語り手が場面や人物を書く | 柚木は腕時計から目を上げずに言った。 |
| 会話文(セリフ) | 登場人物が口にしたことば。小説では「」でくくる | 「遅い」 |
| ト書き | 脚本・戯曲で、セリフ以外に人物の動きや場面を指定する部分 | 柚木、腕時計を見る。 |
国語の授業で物語文を「会話文」と「地の文」に分けて読むのも、この区別です。脚本のト書きは役者やスタッフへの指示なので短く書きますが、小説の地の文は読者が読む文章そのものなので、語り口や文のリズムまで作品の一部になります。
地の文の役割:書くのは4つの描写
地の文が書けないときは、次の4つの描写のうち「いまの場面に足りないもの」をひとつ選んで書きます。
| 描写 | 書くこと | 例 |
|---|---|---|
| 情景描写 | どこで、いつの出来事か | 閉店後の書店は、レジの明かりだけが残っていた。 |
| 行動描写 | 人物が何をしているか | 三森はカップを置き、指先で縁をなぞった。 |
| 五感の描写 | 見える・聞こえる・匂う・味わう・触れる | 濡れたアスファルトの匂いが、開いた窓から流れこんできた。 |
| 心理描写 | 視点人物が考え、感じていること | 言い返せば、たぶん明日から口をきいてもらえない。 |
このほかに、時間を飛ばす(「それから三日、返事はなかった」)、説明をまとめる(「この町の祭りは、もともと雨乞いの儀式だった」)のも地の文の仕事です。
セリフだけの文章に地の文を足すと、どう変わるか
同じ会話に、描写をひとつずつ足して読み比べます。
セリフだけ
「辞めるって、本当?」 「うん」 「いつ決めたの」 「先月」
誰と誰が、どこで話しているのかわかりません。
情景と行動を足す
「辞めるって、本当?」 給湯室の扉を閉めてから、真帆は聞いた。 「うん」 葉山は紙コップにお湯を注ぎながら、真帆の方を見なかった。 「いつ決めたの」 「先月」
職場の、人目を避けた会話だとわかります。「見なかった」の一言で、葉山が話したくないことも伝わります。
心理描写を足す
「先月」 先月。送別会の店を一緒に探した、あの週だ。
一語くり返すだけで、真帆が何に傷ついたのかが見えます。地の文はセリフの間に「間」をつくり、読者が人物の気持ちを追う時間を与えます。
なお、地の文の語り口は視点によっても変わります。一人称なら主人公の言葉づかいで書けますが、三人称では書き言葉が基本になります。視点ごとの地の文の違いと選び方は、一人称と三人称の違いは?で、例文を交えて解説しています。
地の文の書き方:読みやすくする8つのコツ
1. 同じ文末(〜た。)を続けない
「〜た。」が続くと、文章が単調になります。
× ドアを開けた。部屋は暗かった。電気をつけた。誰もいなかった。 ○ ドアを開けると、部屋は暗かった。電気をつけても誰もいない。
文をつなげたり、体言止めを混ぜたりすると、リズムに変化が出ます。例の「誰もいない」のように「〜ている」「〜ない」で終わる現在形の文末を混ぜると臨場感が出ますが、多用すると時制がブレて見えるため、ここぞという文に絞って使います。
2. 主語をくり返さない
日本語は主語を省いても通じます。同じ人物が続けて動くなら、二文目以降の「彼は」は削れます。
× 彼は立ち上がった。彼は窓を開けた。彼は外を見た。 ○ 彼は立ち上がり、窓を開けて外を見た。
3. 「思った」「感じた」を削る
視点人物の内面を書いているとき、「〜と思った」は省いても伝わります。
× もう間に合わないと思った。 ○ もう間に合わない。
4. 気持ちに行動を添える
「悲しかった」と書くだけで終わらせず、悲しい人が思わずしてしまう行動を添えると、気持ちに説得力が出ます。
△ 彼女はとても悲しかった。 ○ 彼女は返信を書きかけて消し、スマホを伏せた。
5. 視覚以外の感覚を入れる
見えるものだけを並べると、写真の説明になりがちです。音・匂い・肌ざわりをひとつ入れるだけで、読者はその場にいるように感じられます。
体育館の床が、上履きの底できゅっと鳴った。
6. 比喩を重ねすぎない
比喩は印象を強めますが、同じ段落で何度も使うとくどくなります。ここぞという一点に絞って使います。
緊張で、指先が他人のもののように冷たかった。
7. 世界観や設定の説明は、物語の中で小出しにする
世界のしくみや人物の経歴は、話の冒頭でまとめて書くより、人物がそれを必要とする場面で少しずつ出すほうが頭に入ります。
× この国では魔法は五系統に分かれ、それぞれに……(以下、説明が続く) ○ 「火の系統じゃないの?」と聞かれ、リオは首を振った。五つある系統のうち、彼の家だけが、どれにも属していない。
8. 三人称の地の文に話し言葉を混ぜない
三人称の地の文は書き言葉が基本です。くだけた言い方や「ら抜き言葉」が混ざると、語り手の位置がぶれて見えます。
× 彼女はマジで焦っていた。朝ごはんも食べれなかった。 ○ 彼女はひどく焦っていた。朝食も喉を通らなかった。
一人称で、主人公の口調として話し言葉を使うのは別です。その場合も、作品の中で口調をそろえます。
地の文が多すぎる・少なすぎるときの直し方
| 状態 | 起きること | 直し方 |
|---|---|---|
| 地の文ばかりで、セリフがほとんどない | 動きが遅く、読むのに体力が要る | 説明している内容の一部を、人物どうしの自然なやり取り(質問と答えなど)に移す。登場人物がすでに知っていることを説明させる「説明ゼリフ」にはしない |
| セリフばかりで、地の文がほとんどない | 誰が話しているのか、どこにいるのかわからない | 場面の頭に場所をひとつ、要所に動作をひとつ足す |
| 地の文が長い段落になっている | スマホの画面が文字で埋まり、目が滑る | 視点人物の目線が動くところで改行する |
| 地の文で、セリフの内容をくり返す | 同じ情報を二度読ませることになる | セリフで言ったことは地の文で言い直さない |
表の「誰が話しているのか」がわからない場面を直すときは、「〜と言った」を毎回書くより、セリフの直後に人物の動作をひとつ置くほうが自然に話し手が伝わります。話し手の書き分けは小説のセリフの書き方で、人物ごとの口調をそろえるならキャラクター セリフ・口調 対照表テンプレートが使えます。
地の文とセリフのちょうどよい割合は、ジャンルや場面で変わります。戦闘や会議の場面は行動とセリフが中心になり、回想や心情の場面は地の文が増えます。迷ったら、スマホの1画面にセリフと地の文の両方が入っているかを目安にします。改行の多さは媒体に合わせます。横書きのスマホ画面で読まれるWeb小説はこまめに改行し、縦書きの紙の本や新人賞の原稿は段落をまとめると、それぞれ読みやすくなります。
地の文の表記の基本
- 段落の最初は一字下げる(全角スペースをひとつ)
- 場面や話題が変わったら改行する
- 「」の中の文末には句点(。)をつけない(つけるなら作品全体でそろえる)
表記のルールは小説の書き方の「原稿の書き方」の節にまとめています。
地の文の練習法
- 好きな小説の1ページを書き写す:セリフ何回ごとに地の文が入るか、場面をどう切り替えているかが、手を動かすとつかめます。
- セリフだけの場面に地の文を足す:自分で4〜6行の会話を書き、そこに4つの描写を1つずつ足して読み比べます。
- 同じ場面を一人称と三人称で書く:地の文の口調がどう変わるかを体で覚えられます。
- 書いた文を声に出して読む:つかえたところが、文が長すぎるか、文末が重なっているところです。
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