起承転結とは?意味を簡単に解説|4コマ・桃太郎の例と小説での使い方
起承転結(きしょうてんけつ)とは、文章や物語を「起・承・転・結」の4つの部分で組み立てる構成法です。 簡単に言うと、次の4つです。
- 起:始まり。人物や状況を示す
- 承:展開。起を受けて話を広げる
- 転:転換。場面や視点をがらりと変える
- 結:結末。全体をまとめて締めくくる
もとは4行の漢詩(絶句)の句の並べ方を指す言葉で、そこから「物事の順序や組み立て」という意味でも使われるようになりました(デジタル大辞泉)。
よく例に挙げられるのが、頼山陽の作と伝えられる俗謡です。
起:大阪本町 糸屋の娘 承:姉は十六 妹が十四 転:諸国大名は 弓矢で殺す 結:糸屋の娘は 目で殺す
起と承で娘たちを紹介し、転でいきなり大名の話に飛び、結で「目で殺す」とつないで落とします。転で一度話をそらし、結で元の話題に戻ってくる——この動きが起承転結の核です。
起承転結の意味:4つの字の役割
| 字 | 読み | 意味 | 物語での役割 |
|---|---|---|---|
| 起 | き | 書き起こし。話の始まり | 主人公と状況を見せ、読者に「どんな物語が始まるのか」を示す |
| 承 | しょう | 起を受けて、話を発展させる | 出来事が起こり、主人公が動き出す。関係や問題が少しずつ深まる |
| 転 | てん | 場面・視点を転じる | 局面や関係が質的に変わる。真相が明かされる、立場が入れ替わる |
| 結 | けつ | 全体をまとめて締めくくる | 起で投げた問いに答え、物語の結果と余韻を残す |
「承」は「承(う)ける」の承で、起で示したものを受け継いで広げる部分です。漢詩の構成法としての起承転結は、古くは「起承転合」とも呼ばれました(精選版 日本国語大辞典)。
起承転結の例:漢詩・4コマ漫画・昔話
漢詩の例として定番なのが、孟浩然の五言絶句「春暁」です(日本大百科全書の解説より)。
| 句 | 本文 | 働き |
|---|---|---|
| 起 | 春眠暁を覚えず | 春の朝の心地よさを詠み起こす |
| 承 | 処処啼鳥を聞く | 鳥の声で、明るい朝の情景を広げる |
| 転 | 夜来風雨の声 | 昨夜の雨風の記憶へ、場面が一転する |
| 結 | 花落つること知る多少 | 散った花を思い、余韻を残して結ぶ |
4コマ漫画は、起承転結が目に見える形式です。1コマ目が起、2コマ目が承、3コマ目が転、4コマ目が結(オチや余韻)。たとえば次のような流れになります。
- 起:放課後、急な雨。傘を忘れた少年が昇降口で立ち尽くしている
- 承:同じクラスの少女が、黙って自分の傘を差し出す
- 転:「きみが濡れるだろ」と少年が言いかけたときには、少女はもう雨の中へ走り出している
- 結:ずぶぬれの少女が振り返り、「わたし、雨好きだから」と笑う
3コマ目で予想を一つずらし、4コマ目でそれを受け止める。短い形式ほど、転の一点に力が集まります。
昔話の例として、「桃太郎」を起承転結に分けると次のようになります。
| 桃太郎 | |
|---|---|
| 起 | 川を流れてきた大きな桃から男の子が生まれ、おじいさんとおばあさんに育てられる |
| 承 | 鬼が村を荒らしていると知った桃太郎が、きびだんごで犬・猿・きじを仲間にして鬼ヶ島へ向かう |
| 転 | 鬼ヶ島で鬼と戦い、仲間と力を合わせて鬼を降参させる |
| 結 | 宝物を持ち帰り、おじいさんとおばあさんと幸せに暮らす |
4コマ漫画では転が「予想をずらす一点」でしたが、昔話では転がいちばんの山場(鬼退治)になっています。同じ起承転結でも、転の働きは形式によって変わります。
作文・ビジネス文書と、物語の起承転結
「起承転結」を調べる人の多くは、作文やレポート、ビジネス文書の書き方として知りたい人です。作文の型として学校で教わることも多く、文章全般の基本形として広く知られています。
作文の例(題「夏休みの思い出」)
起:夏休みに、祖父と初めて川釣りに行った。 承:朝から三時間、一匹も釣れず、私はすっかり飽きてしまった。 転:帰ろうとしたとき、祖父が「釣れない日の川もいいもんだ」と言って、目を閉じて川の音を聞いていた。 結:釣れなくても楽しい時間があると知った。来年もまた、祖父と川へ行きたい。
作文では、転で「思っていたのと違うこと」「別の見方」を一つ入れると、結の感想に重みが出ます。
ただし、論理的な文章に起承転結を使うことには批判もあります。「転」で別の話題を持ち出すと論理の一貫性が崩れる、という指摘です。千葉大学で文章表現の授業を担当した佐藤尚子らの報告(「『文章表現演習』における学生の問題点とその改善について」『言語文化論叢』第2巻、2008年)も、論理的な文章では論の一貫性が重要であり、「転」の部分はそれを損なうと考えられる、と指摘しています。レポートや報告書では、結論から先に書く型(結論・理由・具体例・結論の順に書くPREP法など)がよく勧められます。
物語の起承転結は、ここが逆になります。物語にとって「転」は話をそらす部分ではなく、物語全体の意味を変える部分です。 作文では別の視点や事例を持ち出す部分だった転が、小説では局面の変化、つまり読者の心がいちばん大きく動く場所になります。ここからは、小説・漫画のストーリーでの使い方を見ていきます。
小説・物語での起承転結の使い方
| 字 | 小説で書くこと | よくある失敗 |
|---|---|---|
| 起 | 主人公、その人が大事にしているもの、日常の中の小さな違和感 | 設定の説明だけで、読者が先を知りたくなる出来事がない |
| 承 | 出来事が起こり、主人公が対応し、問題や関係が少しずつ深まる | 似た調子の出来事ばかり続き、話にメリハリがなくなる |
| 転 | 真相の判明、状況の悪化、関係の変化など、物語の質を変える出来事 | 前触れがなく、作者の都合で話を曲げたように見える |
| 結 | 起の問いへの答え、変化した主人公、残る余韻 | 慌てて終わる、または教訓をまとめてしまう |
脚本家の小国英雄は、ストーリーの起承転結を「起=主人公の置かれている状態、劇の説明」「承=その状態に事件が起こり、劇が展開していく過程」「転=ヤマ場で、結果に赴くための転化」「結=事件と転化によって出された結果」と説明しています。物語の起承転結は、事件と人物の変化で組み立てるものだと考えると使いやすくなります。
自作の短編で見る起承転結
約3,000字の短編を想定した、自作の例です。
町の銭湯で番台のアルバイトをしている大学生のひより。毎週木曜、閉店間際にやって来る老人がいる。
起(約600字):ひよりは祖母の銭湯で番台に座って二年目。入口に「閉業のお知らせ」の貼り紙が出てから、ひと月がたつ。そのころから毎週木曜の閉店十分前、決まって同じ老人がやって来る。烏の行水ですぐに上がり、帰りに脱衣所のロッカーの上へ小さな折り鶴を一羽置いていく。
承(約1,200字):ひよりは鶴を捨てられず、空き箱にためていく。「忘れ物ですよ」と声をかけても、老人は「ああ、それはいいんです」と笑うだけ。帰り際にコーヒー牛乳をおまけするうち、天気や湯加減の話をするくらいの仲になる。ある日、鶴の羽の裏に、鉛筆で小さく数字が書かれているのに気づく。「5」「4」「3」……木曜ごとに一つずつ減っている。
転(約900字):閉業を翌週に控えた木曜、老人は現れなかった。足を悪くしてふだんは奥の住まいにいる祖母が、片付けを手伝いに番台へ出てきて、箱の鶴を一羽手に取る。「この字、源さんだね」。老人は四十年前、この銭湯で釜焚きをしていた人だった。羽の数字は、閉業の日までに残った木曜日の数。老人は自分が働いた銭湯の最後の日を、鶴を折りながら数えていた。ひよりがおまけしていたコーヒー牛乳は、昔、老人が仕事上がりに祖父から毎日もらっていたものだった。
結(約300字):最後の営業日の木曜。老人は初めてロッカーに鶴を置かず、番台のひよりに直接差し出した。羽には数字の代わりに「ありがとう」。ひよりは番台の下から、ためておいた鶴の箱を出して見せた。
転を抜くと、この話は「常連客と店員のちょっといい話」で終わります。転があることで、承で積み上げた鶴の数字やコーヒー牛乳が、まったく違う意味に読み替えられます。起の「閉業のお知らせ」も、転のための伏線として働いています。良い転は、この先の展開と同時に、それまでの意味も変えます。
配分の目安:4つを同じ長さにしない
起承転結は4等分の図で説明されることが多いのですが、実際の配分は作品によって大きく変わります。上の短編は 2:4:3:1 で、承がいちばん長く、結がいちばん短い形です。
| 長さ | よくある配分 | 理由 |
|---|---|---|
| ショートショート(2,000字程度まで) | 起と承は短く、転を最後の数行に置く | 積み上げる紙幅がないので、一点の反転で勝負する |
| 短編(数千字〜数万字) | 承がいちばん長く、転と結で全体の3〜4割 | 承で日常や関係を丁寧に積み上げるほど、転の落差が効く |
| 長編(10万字以上) | 全体・章・話のそれぞれに起承転結を持たせる | 下の「長編・連載での起承転結」を参照 |
「転」の作り方:5つのパターン
転は物語の質が変わる場所です。どんでん返しはその一つにすぎません。恋愛ものや日常ものでは、関係や気持ちが変わるだけでも立派な転になります。
- 真相が明かされる:主人公と読者が同時に何かを知り、それまでの出来事の意味が変わる(上の短編の形)
- 状況が暗転する:順調だった道が断たれ、味方・手段・信念のどれかを失う
- 立場が入れ替わる:敵が味方になる、味方が敵になる
- 視点が変わる:別の人物の目で、同じ出来事を見直す
- 関係が変わる:告白、決別、和解など、二人の距離が一気に変わる
どのパターンでも、転の材料は起と承の中に先に置いておきます。読者が読み返して「書いてあった」と思えれば、転は意外で、しかも納得のいくものになります。
長編・連載での起承転結:全体・章・1話
長編では、起承転結を一つだけ置くと中盤が長くなりすぎます。層ごとに使い分けます。
- 作品全体:大きな起承転結で方向を決める。転は終盤に置かれることが多く、主人公がいちばん追い詰められる場面や、真相が明かされる場面になる
- 章(巻):一つの章や巻ごとに起承転結を持たせる。この章の結が、次の章の起になる
- 数話・1話:Web小説の1話(数千字)に起承転結を毎回すべて収めると、展開が駆け足になりがち。数話で一つの小さな起承転結を作り、各話の終わりには続きが気になる「引き」を置く。転の手前や転の直後で話を切り、結を次の話に回すのが典型。書き出しの工夫は小説の書き出しの技法を参照
毎話を大きな転で切る場合は、転の強さに波をつけます。毎回大きくひっくり返すと読者が慣れてしまい、作品全体の本当の転が目立たなくなります。
山場(クライマックス)は転か、結か
4コマや短編では、転が山場で、結は余韻やオチです。長編に起承転結を当てはめると、転は終盤の転換点(真相の判明、主人公のどん底)になり、最後の対決や告白といった山場は結の前半に入ります。結の後半が、締めくくりと余韻です。長編の結を「まとめ」だけで書くと、いちばん盛り上がる場面の置き場がなくなります。
起承転結と三幕構成・序破急の違い
| 起承転結 | 三幕構成 | 序破急 | |
|---|---|---|---|
| 由来 | 漢詩(絶句)の構成法 | ハリウッドの脚本術(シド・フィールドが体系化) | 雅楽・能などの日本の芸能 |
| 区切り | 4つ | 3幕+2つのターニングポイント | 3段 |
| 区切り方 | 4つの役割で分ける | 物語を動かす事件で幕を区切る | 緩やかな導入から急な結末へ、速さと密度の変化で分ける |
| 配分 | 決まった比率はない | 約1:2:1(第二幕が半分) | 能では序一段・破三段・急一段の五段構成が基本とされた |
| 重心 | 転 | ターニングポイントとミッドポイント | 破 |
| 向いている作品 | 短編、4コマ、1話単位の構成、反転のある話 | 目的と障害がはっきりした長編 | 演出のテンポ、場面の緩急 |
序破急は、雅楽の楽章の区分から生まれ、世阿弥が能の構成原理として用いた考え方です(日本大百科全書)。
三幕構成と組み合わせる場合、目安は「起=第一幕」「承=第二幕前半」「転=第二幕後半から第二ターニングポイント」「結=第三幕」です。三幕構成では最後の対決が第三幕にあるので、長編の結にはクライマックスまで含まれます。分量の比率は三幕構成で決め、各部分の役割は起承転結で点検する、という使い方ができます。主人公が見知らぬ世界へ旅立ち、変わって帰ってくる話なら、ヒーローズジャーニーの12段階も重ねられます。
使えるテンプレートと機能
- 小説プロット テンプレート:1章につき1行で、主なできごと・登場キャラクター・伏線・目標文字数を並べる表です。できごとの頭に「起」「承」「転」「結」と書き込むと、どこが長すぎるかがすぐ分かります。転に必要な伏線も、伏線の列に先に置いておけます
- 余白を残す衝突ビートシート:承の各シーンについて、キャラクターが何を望み、何が阻むかだけを書き、結果は書くときまで空けておく表です。承が平板になるのを防げます
- プロット全体の組み立ては小説プロットの書き方5ステップへ
LitMemoのストーリープロットでは、「起」「承」「転」「結」のように自由に名前をつけたグループで項目を並べられます。各項目にはキャラクター・設定・タイムラインの出来事・伏線をひもづけられ、項目からそのまま新しい話(本文の原稿)を作れます。小説プロット テンプレートから始める →
